応援隊・支援員インタビュー「土と風‐地域を耕す人びと-2014-」  Vol.8南三陸町歌津地区伊里前

伊里前福幸商店街組合長・山内義申(よしのぶ)さん(59)
〔プロフィール〕1956年1月、宮城県南三陸町生まれ。(有)ヤマウチ代表取締役。2013年9月に開設された南三陸歌津伊里前福幸仮設商店街運営組合の組合長を務める。

南三陸町歌津伊里前地区復興応援隊・佐々木真一さん(52)
〔プロフィール〕1963年1月、石巻市生まれ。登米市在住。2012年10月から復興応援隊として南三陸観光協会のスタッフを務める。2013年からは引き続き応援隊として、石巻市のスポーツ振興サポートセンターに所属。2014年から南三陸町歌津伊里前地区復興応援隊。

商店街の情報発信と
にぎわいづくりに尽力

季節の祭り、イベントで活躍

─お二人の活動について教えてください。
山内さん「伊里前福幸仮設商店街(以下伊里前商店街)には、震災で被災した歌津地域の衣料品店、理美容、お酒、食品、海産物、お土産・グッズ、電気、釣船など10店舗が入居しています。普段の商店街の運営に加えて、イベントの開催も組合の大事な仕事。3月はわかめまつり、5月はシロウオまつり、8月は歌津地区の夏まつり、12月はアワビまつりを開き、食材を調理して振る舞ったり、市場よりも安く提供したりして地場産品のPRに努めています。支援者やボランティアの皆さんによるコンサートなども開いています」

佐々木さん「私は伊里前商店街の応援隊として、主にイベントの企画と運営を担当しています。イベントの際に各行政機関に手続きしたり、チラシを作ったりしています。お祭りでコンサートが開かれる時には出演者の連絡調整係もしますし、ステージの演出などもします」

山内さん「イベントを開くとお客様に喜ばれるのは分かっているのですが、企画から運営までとなると本当に大変なんだよね。応援隊の皆さんが手伝ってくれるから、本当に助かっています。佐々木さんは特にアーティストとのつながりが多くて、出演交渉なんかも上手だしね」

佐々木さん「被災地で支援コンサートなどに来るアーティストの方々に、直接連絡を取ってお願いしたりしているんです。無償では来てくださる方も少ないのですが(笑)、今でも継続してくださっている方もいてありがたく思っています」

実家の被災が、応援隊のきっかけ

─佐々木さんはどうして応援隊になったのでしょうか。
佐々木さん「震災前は製造関係の仕事をすることが多かったんです。しかし、石巻にある実家が津波で浸水して。後片付けを手伝い、これは大変だと感じました。ほかの被災地でも、石巻と同じく大変なところはまだまだある。それまでボランティア活動や、人に関わる仕事をしたことはなかったのですが、自分でも何か力になれることがあるんじゃないかと思ったことがきっかけです」

─伊里前で3回目の応援隊業務ですね。

佐々木さん「被災地には、まだまだ支援が必要だと感じています。私は2年前に初めて南三陸で応援隊の仕事に就きました。おかげで伊里前にも顔見知りができ、今回もスムーズに地域に溶け込むことができたと思います。特に今は被災者と直接関わる仕事で、やりがいがありますね。伊里前の住民は明るく、来る者を拒まない。特に女性が元気です。イベントを企画すると、みんなが参加して一緒に楽しんでくれます」

山内さん「佐々木さんは自ら考えて動ける人。企画力も実行力も、反省力もある(笑)。細かい雑事もまめに手伝ってくれて助かります」

「地域と地域のつながりつくりたい」

─伊里前地域と商店街の現状を教えてください。

山内さん「地域で言えば、被災者が自宅を再建したり、災害公営住宅などに転居したりして、仮設住宅から移っていっています。一方、仮設住宅には経済的に困窮した人や家族のいない高齢者らが残る。仮設住宅の集約が進めば、弱い人だけが残り、自治会さえ作れないところも出てくるでしょう。ボランティアの手も少なくなっており、復興から取り残される人が出てくるのではないかと懸念しています」

山内さん「私も自宅と店舗がすべて流され、仮設住宅で暮らしています。震災後はとても店を再建できるとは思わなかった。支援物資が入ることで、地元の商売が成り立たなくなったという事情もありました。しかし、ある団体が、地元で調達した物資を地元に供給するという方法で支援を始めてくれて。『こういう形で支援してもらえるなら、いけるかもしれない』と思い直し、2011年10月から仮設テントでの営業を始めました。当初は周りの商店主も商売をやめると言っていましたが、次第に仲間が集まって仮設商店街をスタートさせることができました」

─今後はどのような活動をされるのでしょうか。どんな課題が考えられますか。

山内さん「2016年12月をめどに本設の商店街をオープンさせる計画です。南三陸町の二つの商店街の組合がまとまってまちづくり会社を組織し、運営します。現在の仮設商店街に入っていない人や新たに起業したいと意欲のある若者にも入居してもらいたいと思っています。入居には費用がかかり、資金の問題で悩んでいる人も少なくありませんが、やれる人たちで頑張ろうと励まし合っているところです」

山内さん「震災から4年が経ち、商店街の売り上げは前年度よりも落ちました。しかし、本設のオープン後も、地元のお客様や全国の支援者のみなさんに伊里前に来てほしい。にぎわいの場を作り、交流の場として復興させたいんです」

佐々木さん「まちづくりが進み、新しい道路ができれば、人の流れも変わるかもしれません。伊里前を訪れていた人が、ほかの地域に流れないとは限らない。だからこそ本設に移る前からしっかりと情報を発信して、伊里前のアピールをしていかなければと思っています」

─応援隊への期待や要望をお聞かせください。

山内さん「特に商店街は、商売をして利益を出す場所。そのために、地場産品を活用した商店街オリジナルの商品を開発したり、その商品を売ったりする取り組んでもらえるとありがたいです」

─今後の目標を教えてください。

佐々木さん「伊里前に来てくれたアーティストのみなさんを通じて、ほかの被災地とつながっていきたいと考えています。最近では、石巻市雄勝町の黒船太鼓保存会のみなさんに伊里前で演奏してもらい、雄勝との交流が生まれました。人と人のつながりが地域と地域のつながりに発展すれば、半永久的なつながりになりますし、互いに良い関係で復興に向かえると思います。私はそのための橋渡し役を務めたいですね」

(以上)

2015年1月取材

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