応援隊・支援員インタビュー「土と風‐地域を耕す人びと-2014-」  Vol.6石巻市中央地区

石巻観光協会常務・阿部勝浩さん(45)
〔プロフィール〕1969年5月生まれ、石巻市渡波地区出身。1998年から一般社団法人石巻観光協会勤務。

石巻地区復興応援隊・渡邊淑子さん(29)
〔プロフィール〕1985年7月生まれ、兵庫県出身。小学校2年生の時に阪神淡路大震災を経験した。2012年12月から石巻地区復興応援隊として一般社団法人みらいサポート石巻に所属。

みんなのやる気を形に
「観光にできること」考える

勉強会でスタッフの意識向上

─お二人の活動について教えてください。

渡邊さん 「みらいサポート石巻には私を含めて応援隊8人が所属し、街づくりや仮設住宅支援などの活動をしています。石巻観光協会と連携しての観光産業の振興も事業の一つで、私は担当として協会の業務をサポートしています」

阿部さん 「当協会は震災後、ホームページの拡充による情報の発信やオンラインショップを通じた地場産品の販売に力を入れてきました。渡邊さんには会員である飲食店などを取材し、ホームページで紹介してもらったり、協会のスタッフ向けにオンラインショップ運営の勉強会を企画したりしてもらいました。人材と知識のない中、さまざまな面で助けられています」

渡邊さん 「私は情報発信やネットの専門家という訳ではありません。震災後に石巻でできたつながりを生かし、メディア関係やIT関係の知人に一つ一つ教えていただいたんです。学んだことを生かし、協会のスタッフのみなさんと共有してきました」

阿部さん 「渡邊さんは真面目なんですよ。私たちの質問に対して、分からないことでも必ず後で調べてきてくれるんです。信頼して一緒に仕事ができる。特にオンラインショップの勉強会は、スタッフも熱が入っていましたね」

渡邊さん 「カメラマンの方を講師に招いて何回か勉強会を開催し、商品撮影の方法などを学びました。回を重ねるほどに、スタッフ自身がアイデアを出すようになってきて」

阿部さん 「今では、商品をいくつか並べてみたり、中身を取り出して皿に盛り付けてみたりと、撮影に工夫を重ねているようです。おかげで良い写真が撮れて、ショップも充実しました。いつか、もっと良いカメラを買ってあげなくちゃいけないかなと(笑)」

渡邊さん 「私はスタッフのみなさんにちょっと意識付けしただけなんです。協会は、石巻の良い品物を扱っている。『ほかにはない石巻らしさ。発信しないと損ですよ』と伝えてきました。写真一つで変わると知ってもらい、嬉しいです」

阿部さん 「後は協会主催の朝市を定期的に開催しているのですが、渡邊さんはじめみらいサポートさんのスタッフが毎回、何人も応援に来てくれるんです。夜も遅くまで仕事をしているようなのに、本当にありがたい。頑張っている姿を見て、みなさんに恥ずかしくない仕事をしようと思います」

被災地とのギャップに違和感
─渡邊さんが応援隊になったきっかけを教えてください。
渡邊さん 「震災当時は関西で仕事をしていました。ニュースで被災地の状況を見て、『自分の国で起きていることなのに、何もできないのか』ともどかしさを感じて。石巻に何度かボランティアに来たんです。そこで本当に人手のないことや、そんな中でもボランティアに力を注いでいる人の存在を知りました。ボランティアを終えて関西に戻ると、被災地との大きなギャップを感じるようになったんです。一方では石巻とのつながりができていました。思い切って拠点をこちらに移し、2012年12月から応援隊として活動を始めました」

─活動を始めて、どんなことを感じましたか。

渡邊さん 「私はとても恵まれた環境にいると思っています。阿部さんは、誰に対しても心配りをしてくださる、素晴らしい方です。その阿部さんをはじめ、尊敬する方々の下で活動できる。心から役に立ちたいと思える方々に出会えました。石巻でのつながりがあるからこそ、これだけ携わることができているのだろうと思います」

─応援隊の存在は、地域にどのような影響をもたらしているでしょうか。

阿部さん 「地元の人間だけでは話が進まないというケースも少なくないのですが、外から来た人がいることでスムーズに進むということがあります。視野が広がり、新しい考え方も生まれる。潤滑油、橋渡し役のようなものでしょうか。本来はつながらなかった地元の人間同士をつなげる役目も果たしていますね。地域の再生に向けて確実に力になってくれていると思います。一日でも長く石巻にいて、第2の故郷だと思って活動していただきたいです」

─石巻の観光面における現状と課題を教えてください。

阿部さん 「仙石線が来年開通する見通しとなり、仙台圏からの来訪者が増えるのではないかと期待しています。問題は産業です。石巻の基幹は水産業。魚が揚がって初めて加工品やお土産を作ることができます。ですが、まだ魚市場は完全に復旧しておらず、水揚げも震災前の状況には戻っていません。また、沿岸半島部の各地域は、街づくりもまだこれからというところが多い。各地には拠点となる観光施設もありますので、施設の復旧・整備も見据えながら交流人口の増加を図りたいと考えています」

渡邊さん 「観光協会や地元の関係機関、団体などが参加する『石巻ビジターズ産業ネットワーク』が、語り部さんやその所属団体の連携を図り、プログラムとして企業や個人に提供する仕組みづくりを検討しています。語り部ツアー、地元飲食店、宿泊施設、さまざまな体験事業などを組み合わせたプランを地域全体で考え、長く継続できる事業につなげていきたいと思っています」

─今後の目標は。

渡邊さん 「震災前よりも良い街、若者が戻ってきたいと思う街づくりをしていきたいです。そのために観光にできることはたくさんあります。地元のお店をはじめ観光産業も活気を取り戻してきています。私たちが力になり、一つでも多くみなさんのやりたいことを形にし、地域を盛り上げていくことができれば嬉しいです」

(以上)

2014年12月取材

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